生徒たちの「分からない」を取り上げて考えていきます。
解き方が分からない前提で「どんな風に考えて解いていくか」という過程を書いていくので、ぜひご自身でも解き方を考えながら読み進めてみてください。
今回は、中学3年の数学「式の展開」からの出題。いくつかの教材から問題をピックアップしてきました。新年度最初の中間テストのテスト範囲になるのでしっかり理解して自由自在に扱えるよう勉強しておきましょう!
次の式を展開せよ。
(1)
( x + y - 6 ) ( x + y - 8 )
(2)
( x - y + 5 ) ( x - y - 5 )
(3)
( x + 3y - 2 ) ( x + y - 2 )
(4)
( a + b - 3 ) ( a - b - 3 )
(5)
( a + b - 2 ) ( a - b + 2 )
ここで学んでおきたい考え方は、文字の置き換え、です。
もちろん、そんなことをせずに一つひとつ丁寧に計算して解いてもいいんだけど、もっと複雑な問題だとその計算も大変になるかもしれません。
問題を解くうえで色々な考え方を知っていれば、計算がとても楽になるケースもたくさんあるので、ぜひ身に付けておきましょう。
(1) と (2) は基本的な置き換えのパターン。
(3) と (4) は置き換える式がまとまっていないのでちょっとだけ分かりにくいパターン。特に (4) の方は置き換える部分を間違いやすいです。
(5) はそのままでは置き換えができないので符号の操作が必要なパターン。この中では一番難易度が高い問題ですね。
中学3年生は、解説を見る前に自分で解けるかチャレンジしてみてください!
では解説。
↓
問題(1)
置き換えの基本問題その1。x+y=M と置き換えることで、
乗法公式 (x+a)(x+b)=x²+(a+b)x+ab
が利用できる形にりますね。公式の x , a , b の値はそれぞれ M , -6 , -8 となるので、この値で展開。置き換えた M を元に戻します。最後に、
乗法公式・和の平方 (x+a)²=x²+2ax+a²
分配法則 a(b+c)=ab+ac
といった復習も踏まえつつ展開すれば解となります。
問題(2)
置き換えの基本問題その2。x-y=M と置き換えることで、
乗法公式・和と差の積 (x+a)(x-a)=x²-a²
が利用できる形にりますね。公式の x , a の値はそれぞれ M , 5 となるので、この値で展開。置き換えた M を元に戻します。最後に、
乗法公式・差の平方 (x-a)²=x²-2ax+a²
の復習も踏まえつつ展開すれば解となります。
ちょうど (1) (2) を解く過程で乗法公式4つ全部登場するので良い復習になりますね。これらの公式をきちんと扱えないのであればここで勉強しなおしておきましょう。
問題(3)
置き換えに使う共通の値 x , -2 が並びで置いてない、っていうだけ。頭の中できちんと処理できるならそのまま置き換えればいいけれど、自信がないなら一旦並べ替えてから置き換えるのが良いかもしれないですね。
あとは、置き換えて展開、戻して展開、するだけです。
最後に出来上がった多項式の式の並びを整理していますが、これはしてもしなくても大丈夫だと思います。この問題の解答では並べ直していたので、それに倣っています。
並べ方の作法は大まかに、
①次数の大きなものから
②アルファベット順
だけ押さえておけばいいと思います。この問題であれば、
x²=xx , 4xy , 3y²=3yy → 文字2つなので次数は2
-4x , -8y → 文字1つなので次数は1
4 → 文字無しなので次数は0
ということで上のような順に並べています。
個人的にはキレイに並んでいる方が気持ちいいですし、例えば「先生が採点しやすくなれば良いな!」なんて考える優しさがあると素敵だな、って思います。
問題(4)
この問題の間違いやすいポイントは、パッと見て b-3 を置き換えてしまう点。確かにどちらの式にも b-3 が含まれていますが、これは誤り。結構ここ分かっていない子は多いです。
よく見誤るポイントなので気を付けましょう。
この式の値を整理すると、
左側:( a+b-3 ) → a , b , -3
右側:( a-b-3 ) → a , -b , -3
となります。なので b-3 を同じものとしては扱えないということ。共通部分は a-3 となります。あとはこれを別の文字に置き換えて展開、文字を戻して展開すれば解となります。
ちなみのこの問題の解答は展開後の式のままで、特に並べ直しはされていませんでした。そんな感じで「キレイに並べないとダメ」と言ったルールはなく結構アバウトです。並べ直すなら、
a²-b²-6a+9
でしょうか。なのでこの辺りは気楽に考えましょう。
問題(5)
この問題はこのままでは置き換えが使えません。式の値を整理すると、
左側:( a+b-2 ) → a , b , -2
右側:( a-b+2 ) → a , -b , 2
ここで注目する点は b , 2 の符号があべこべになっていること。つまり左側の b , -2 の符号をひっくり返せば -b , 2 となり右側の式と揃えられます。その逆もまた然り。
そこでそのためのテクニックが符号の操作。-1 で括る、という考え方が分かりやすいかな。そうすることで置き換えが使える形に整えることが可能です。
例1: -a+b = -(a-b)
例2: -a-b = -(a+b)
ここさえわかれば、あとは置き換えて展開、戻して展開のいつも通りの処理で解を出せます。
最後に気を付けるポイントは、(b-2)² を展開したときの式を括弧の中に入れておくこと。
-(b-2)² は (-1)×(b-2)² っていう掛け算だから
っていう説明でなんとなく理解できるだろうか。ミスしやすいポイントなので気をつけましょうね。
さて、この問題、ちゃんと理解できたでしょうか?今回の解説では右側の式の -b+2 を括って符号操作したけれど、当然左側の式をいじって解くことも可能です。
ということで、ここまでちゃんと理解できた!と思えたなら、ぜひ左側の式の b-2 の方を符号操作して解くことにチャレンジしてみてください!こんな感じで自分の中の理解を確認することは大切ですよ!
解説は↓
問題(5) 別解
文字に置き換えるときに分かりやすいよう右側の式も整理しています。文字式の計算、符号の扱い、その辺りきちんと理解していれば大丈夫なはず。
よく分からないことが、きちんと分かるようになると楽しいですよね。
勉強がんばって!そして楽しんでください!
最後に。式の置き換えに使用した文字、今回は「M」でしたが、これじゃなきゃダメってことではなくどんな文字を使っても ok です!
問題を見てると「A」や「X」なんかも使ったりしていますが、大文字を使う理由は、式にあるもともとの文字と区別しやすいように、ということだと思います。
小文字の「x」がある問題で置き換えに大文字の「X」を使うと紛らわしいから避けた方がいいかも、とか、いろいろ考えて好きな文字を使って解いてください。
ちなみに、こういった置き換えで「M」をよく使う理由は、
modify 修正する/変更する
の頭文字をとって「M」をよく使う、そういう慣習がある、という感じのようです。
式の展開を置き換えを活用して解く、という本題からはズレた事柄ですが、勉強ってこういう寄り道の方が楽しかったりしますよね。
以上です。お疲れさまでした!
(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
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Rにいた岩と中 (水曜日, 19 4月 2023 20:45)
ご無沙汰しております。ブログ続けておられてるのですね。また得意のルービックキューブを見たいです。