生徒たちの「分からない」を取り上げて考えていきます。
解き方が分からない前提で「どんな風に考えて解いていくか」という過程を書いていくので、ぜひご自身でも解き方を考えながら読み進めてみてください。
今回は、とある中学の授業で出されたプリントからの出題、理科(2年 化学) の問題です。
どこかの高校入試の問題の引用らしく、(6) が難しいと言って生徒が持ってきてくれた問題です。
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まずは (1) から。この問題は、銅と酸化銅の質量の変化を示した表のデータから計算して求めることができますね。それでは!
Let's think!
(1) の問題。
10.0g の銅を完全に酸素と反応させると何g の酸化銅になるか。表に書かれている銅と酸化銅の質量から比率を求めて、そこに 10.0g を当てはめるとどうなるか、を考えれば良いですね。
表より、銅 0.4g → 酸化銅 0.5g ということが読み取れるので、銅と酸化銅の比率は、
銅:酸化銅 = 0.4:0.5 = 4:5
ということが分かります。あとは比例式にして計算します。
ちなみに比例式の計算の仕方について。「内項の積と外項の積は等しい」という性質から
A:B=C:D → AD=BC
となるのですが、分からない子は調べて勉強しなおしておきましょう。
4:5 = 10.0:x
4x = 50.0
x = 12.5
よって、10.0g の銅を完全に酸素と反応させてできる酸化銅は、
A. (1) 12.5g
ということになります。
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それでは (2) に行きましょう!
この問題は、表のデータを使うのと、問題文の中の「銅と酸素は原子数の比が 1:1 で結びつく」ということを合わせて考えれば解を求めることができます。
Let's think!
(2) の問題。
「銅と酸素の質量比」と「銅原子1個と酸素原子1個の質量比」というのはきっちり分けて考えないといけません。この問題の場合は「銅と酸素は原子数の比が 1:1 で結びつく」ということなので、どちらの質量比も同じになるのですが、それもきっちり理解しておきましょう。
まずは「銅と酸素の質量比」について、表のデータから考えます。
銅 0.4g を酸素と完全に反応させてできるのが 0.5g の酸化銅です。ということは、
0.5 - 0.4 = 0.1
銅 0.4g に対して反応した酸素の質量は 0.1g であることが分かります。そこから銅と酸素の質量比は、
銅:酸素 = 4:1
となります。ここから「銅原子1個と酸素原子1個の質量比」を考えます。
「銅と酸素は原子数の比が 1:1 で結びつく」ということは、銅と酸素の原子の数はイコールになるということ。
これはつまり、「銅 0.4g、酸素 0.1g」があったとして、銅の原子数が仮に 100個だとしたら、酸素の原子数も 100個だということ。銅と酸素の質量をそれぞれの原子数で割ると原子1個あたりの質量が分かりますが、
0.4 ÷ 100 = 0.004 ←銅原子1個あたりの質量(仮)
0.1 ÷ 100 = 0.001 ←酸素原子1個あたりの質量(仮)
銅原子1個の質量:酸素原子1個の質量 = 0.004:0.001 = 4:1
というように、原子数の比が 1:1 なら、「銅と酸素の質量比」と「原子1個ずつの質量比」も変わらず同じになるということですね。
よって、「銅原子1個と酸素原子1個の質量比」は、
A. (2) 4:1
となります。
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ここからは仮定の話。
もしも、銅と酸素の原子が 1:3 とかで結びつくとしたら?を少しだけ考えてみます。
・「銅原子1個と酸素原子1個の質量比」が 4:1 の場合。
銅と酸素の原子が 1:3 で結びつく、つまり 4:1+1+1 となるので
「銅と酸素の質量比」は 4:3 となる
・「銅と酸素の質量比」が 4:1 の場合。
銅と酸素の原子が 1:3 で結びついている、つまり 4:1/3 + 1/3 + 1/3 となるので
「銅原子1個と酸素原子1個の質量比」は 4:1/3 = 12:1 となる
この理屈が分かるでしょうか。
これがきちんと分かっていれば (6) も解くことができますよ!
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それでは (3) に行きましょう!
この問題は、先ほどの問題を解く過程で得た、銅と酸素の質量比、から簡単に解くことができますね。
Let's think!
(3) の問題。
先ほどの問題で、銅と酸素の質量比は、
銅:酸素 = 4:1
であることが分かっていますね。これを使って 6.0g の銅に反応する酸素の質量を求めます。
4:1 = 6.0:x
4x = 6.0
x = 1.5
6.0g の銅に対し反応する酸素の質量は 1.5g であることが分かります。酸素は 6.0g あるとのことですが反応に使われた酸素は 1.5g だけなので 6.0 - 1.5 で、この問題の解は、
A. (3) 酸素が 4.5g 残る
となります。
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それでは (4) に行きましょう!
この問題は、反応した酸素の質量、その質量の酸素で反応する銅の質量、を考えていけば解くことができます。
Let's think!
(4) の問題。
3.0g の銅粉を加熱しできた化合物の質量が 3.5g ということは 3.5 - 3.0 で 0.5g の酸素が反応したということが分かります。
銅:酸素 = 4:1
から、酸素 0.5g と反応した銅の質量は、
4:1 = x:0.5
2.0 = x
3.0g のうち 2.0g の銅粉が反応したということなので、まだ反応していない銅の質量は
3.0g - 2.0g だから、
A. (4) 1.0g
となります。
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それでは (5) に行きましょう!
この問題は、酸化銅の質量を求める、酸化マグネシウムの質量を求める、マグネシウムと酸素の質量比 3:2 からマグネシウムの質量を考える、という 3つのステップで考えてみてください。
Let's think!
(5) の問題。
銅粉にマグネシウムを混ぜて反応させた、ということだが銅粉は銅粉で分けて考えれば良い。
まずは銅粉 5.0g を完全に酸素と反応させたときの酸化銅の質量を考えます。
銅:酸素 = 4:1
ここまで何度も使ってきた銅と酸素の質量比ですが、扱いやすいように少しパワーアップさせましょう。銅と酸素の比率が 4:1 ということは酸化銅の比率は 5 となりますね。
銅:酸素:酸化銅 = 4:1:5
ここから、銅 5.0g に対する酸化銅の質量を求めます。銅 4 に対して酸化銅 5 なので、
4:5 = 5.0:x
4x = 25.0
x = 6.25
銅粉 5.0g と反応してできた酸化銅は 6.25g であることが分かりました。
酸化銅と酸化マグネシウムの混合物の質量が 8.75g なので、ここから酸化銅の質量を引くと、
8.75 - 6.25 = 2.5
酸化マグネシウムの質量が 2.5g であることが分かりますね。
問題文に「マグネシウムと酸素の質量比は 3:2」であると書いているので、ここから酸化マグネシウムの比率も考えて整理すると、
マグネシウム:酸素:酸化マグネシウム = 3:2:5
マグネシウムと酸化マグネシウムの比率が 3:5 なので、
3:5 = x:2.5
7.5 = 5x
1.5 = x
よって銅粉と混ぜたマグネシウムの質量は、
A. (5) 1.5g
となります。
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それでは (6) - ① やってみましょう!
この問題は、酸化銅 22.5g と反応した酸素の質量を求めて考えれば良いですね。
Let's think!
(6) - ① の問題。
酸化物 Y 中の金属 X と酸素の比率を求めよ。で、まず分かっているのが酸化物 Y の質量が 15g だということ。
あとは問題文の中に「酸化銅 22.5g に含まれる酸素と同じ質量の酸素」と反応させた、と記載があるので、酸化銅 22.5g に含まれる酸素の質量を求めればいいですね。
銅:酸素:酸化銅 = 4:1:5
酸素と酸化銅の比率は 1:5 なので、
1:5 = x:22.5
22.5 = 5x
4.5 = x
酸化物 Y の質量 15g のうち、酸素の質量が 4.5g なので、金属 X の質量は、
15 - 4.5 = 10.5
となる。あとは金属 X と酸素の質量比を求めればいいので、
10.5:4.5 = 105:45 = 7:3
よって答えは、
A. (6) - ① 7:3
となります。
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それでは (6) - ② やってみましょう!
この問題は、(2) の問題の解と、問題文にある「銅原子と金属 X の原子の質量比」とを合わせて考えてみましょう。
Let's think!
(6) - ② の問題。
問題文に「銅原子1個と金属 X の原子1個の質量比」が「8:7」であると書いてありますね。あとは (2) のところで「銅原子1個と酸素原子1個の質量比」が「4:1」であることも分かっています。
この二つの比率の共通項である「銅原子1個の比率」を揃えてあげれば、金属 X と酸素の原子1個の質量比を求めることができますね。
銅原子1個:金属 X の原子1個 = 8:7
銅原子1個:酸素原子1個 = 4:1 = 8:2
銅と酸素の比率を 2倍にして調整してあげると、銅の比率を揃えることができます。
銅原子の比率「8」に対して、金属 X の原子の比率が「7」
銅原子の比率「8」に対して、酸素原子の比率が「2」
なのだから、
金属 X の原子1個:酸素原子1個 = 7:2
と考えることができますね。よって答えは、
A. (6) - ② 7:2
となります。
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それでは (6) - ② やってみましょう!
この問題は、① の比率と ② の比率が異なるという点がポイントです。物質の質量比と、その物質の原子1個の質量比が異なる、ということは原子同士が結びつく個数の比が 1:1 ではないということ。それを踏まえて考えてみてください。
Let's think!
(6) - ③ の問題。
①と②の問題の答えから、
金属 X :酸素 = 7:3
金属 X の原子1個:酸素原子1個 = 7:2
であることが分かっています。原子の質量比と物質の質量比が異なるということは、結びつく原子の個数が異なるということ。
原子の比率 7:2 で、原子の数がいくつといくつで結びつくと物質としての質量比が 7:3 になるのか、を考えれば良いですね。
少し考えやすいように原子の方の比率を少し変形させます。
金属 X の原子1個:酸素原子1個 = 7:2 = 3.5:1
これを物質の質量比 7:3 になるようにすると、
金属 X の原子2個:酸素原子3個 = 3.5 + 3.5:1 + 1 + 1 = 7:3
よって金属 X と酸素の原子数の比は
A. (6) - ③ 2:3
となります。
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最後の問題の金属 X ですが、質問をくれた生徒は授業のあとにその正体を友達と一緒に調べてみたそうです。
答えは「鉄」だそう。
酸化鉄の化学式を調べてみると、
酸化鉄(II)、酸化第一鉄:FeO
酸化鉄(III)、酸化第二鉄:Fe₂O₃
酸化鉄(III)鉄(II)、四酸化三鉄:Fe₃O₄
など、さまざまな種類があるようですね。この問題の酸化物 Y というのは酸化鉄(III)ということになるのかな。
中学の勉強の範囲からは逸脱するけれど、興味がある人は調べてみると面白いかもしれないですね。
問題を解けば終わり、答えが分かれば終わり、ではなく、問題を解く過程でたくさんの「なんだろう?」っていう疑問を見つけて、それを理解していく努力が勉強です。
そしてその「なんだろう?」を解き明かしたときの達成感を味わうのが勉強の醍醐味です!
ぜひたくさんの「分からない」を見つけて、それを「分かった!」に変えていく努力をしていってくださいね!
以上です。お疲れさまでした!
(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
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妙優 (日曜日, 03 3月 2024 16:24)
3.0gの金属Bと反応する酸素の質量は何gですか。解き方教えてください